「源氏物語」から,およそ100年後に成立したと思われる『山路の露』では,品詞の出現率の差はあまり出なかったが,江戸時代成立の『手枕』では,ある程度の差があらわれた。同様の方法で,『雲隠六帖』について考察する。
『雲隠六帖』は,雲隠,巣守,桜人,法の師,雲雀子,八橋の六篇からなり,内容は,それぞれ「源氏物語」に描かれていない部分を補っている。永暦元年(1160)前後に成立したであろうとされる「源氏物語」の最初の注釈書である『源氏釈』に,桜人の引用があることから,鎌倉時代以前には,成立したようであるが,現存のものは偽作であろうといわれている。従って奥書も信用されていない。ここでは,主要7品詞,名詞,動詞,形容詞,形容動詞,副詞,助詞,助動詞の総語数に対する出現率を,主成分分析,その他の方法で,比較する。出現する語の上位20
語についても詳しく分析する。さらに『大成』に出現していない語の使用率を調べる。これによって『雲隠六帖』の文体の特徴がある程度明らかになり,他作品との比較ができた。