○上田英代*、村上征勝**、今西祐一郎***、樺島忠夫****、藤田真理*****、上田裕一******
(*古典総合研究所、**統計数理研究所、***九州大学、****神戸学院大学、*****東電学園、******もとぶ野毛病院)
「源氏物語」に使用されている助詞の種類は『大成索引篇』助詞助動詞の部の見出し語に準拠すると、56種類である。ただし、「ゆふつかた」の「つ」のような一語中に含まれている助詞も含めると57種類である。
これらの助詞の総語数に対する種類別出現率は、表1のとおりであり、これを各巻別に求め、主成分分析し散布図に描くと図1となる。
に | 0.04876 | や | 0.00530 | だに | 0.00156 | かは | 0.00046 | な | 0.00017 | ものか | 0.0000186 |
て | 0.04264 | こそ | 0.00497 | で | 0.00153 | ものを | 0.00043 | な | 0.00011 | なんど | 0.0000160 |
の | 0.03804 | なむ | 0.00479 | まで | 0.00135 | やは | 0.00042 | なむ | 0.00011 | ものかは | 0.00000798 |
も | 0.03217 | ぞ | 0.00452 | か | 0.00134 | ものから | 0.00037 | がな | 0.0000745 | が | 0.00000532 |
と | 0.02838 | より | 0.00358 | が | 0.00126 | して | 0.00034 | から | 0.0000745 | ものゆゑ | 0.00000532 |
を | 0.02555 | つつ | 0.00212 | ながら | 0.00111 | へ | 0.00025 | てしかな | 0.0000691 | かも | 0.00000266 |
は | 0.02381 | のみ | 0.00196 | し | 0.00101 | そ | 0.00024 | して | 0.0000612 | ||
ば | 0.01464 | かな | 0.00178 | さへ | 0.00086 | な | 0.00024 | づつ | 0.0000372 | ||
など | 0.01023 | ばかり | 0.00158 | とも | 0.00067 | ども | 0.00024 | ものの | 0.0000372 | ||
ど | 0.00647 | かし | 0.00156 | よ | 0.00055 | ばや | 0.00023 | にしかな | 0.0000346 |
これを見ると、宇治十帖はある程度のまとまりをなしている。
相関係数
@ABCについて各巻の分布を図にすると、図2,3,4,5である。
さらに個々の助詞の中で出現率の高いものから順に相関係数の高い組み合わせを挙げると以下のとおりである。
@「の」と「と」 -0.73761
A「の」と「ば」 -0.67077
B「て」と「も」 -0.60565
C「と」と「ば」 +0.63463
@ACについて、「の」は体言に多く付属し、「と」と「ば」は用言に多く付属するので、体言と用言の各巻の出現率によって逆相関となり、「と」と「ば」については順相関となる。
「て」と「も」については詳細に検討しなければならない。これらの結果を踏まえて更に細かい分析を行なってゆく予定である。