まず源氏物語全体での会話文、地の文、和歌の占める比率は、表1である。
会話文 | 地の文 | 和歌 |
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35.1 | 61.8 | 3.1 |
また、それぞれの文の中での総語数に対する助詞の出現率は、表2のとおりである。
会話文 | 地の文 | |
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助詞の出現率 | 31.1 | 32.1 |
次に各巻での出現率を示したものが、グラフ1である。
表2、グラフ1より源氏物語全体では地の文のほうが助詞の出現率は高く、巻毎では54巻中33巻で、地の文の助詞の出現率が高いが、顕著な差は見られない。
次に、会話文と地の文で出現する助詞の種類について調べた。まずおおまかな傾向を探るために、格助詞、接続助詞、係助詞、副助詞、終助詞、その他とグループ分けした。グループ毎の出現率は、表3である。
会話文、地の文ともに、格助詞、接続助詞、係助詞で助詞全体の出現率の90%以上を占めるが、そのなかの構成比は、かなり異なり、格助詞と接続助詞は地の文に、係助詞は会話文に多いことがわかる。しかし、もう少し詳しく調べるとグループ内の助詞が
会話文 | 地の文 | |
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格助詞 | 43.7 | 46.8 |
接続助詞 | 16.8 | 25.3 |
係助詞 | 31.7 | 20.3 |
副助詞 | 4.5 | 6.7 |
終助詞 | 2.6 | 0.6 |
その他 | 0.4 | 0.1 |
同じ出現傾向を持っているとは限らないことがわかる(表4)。
表4より特に、格助詞では「と」が、接続助詞では「て」が、地の文に多い。係助詞に関しては、宮坂和江氏(「係結の表現価値」国語と国文学、第29巻2月号)が、「や」「こそ」「なむ」「か」「かは」「やは」が、会話文に多いことを指摘しているが、一応そのことは見てとれる。また、グラフ2、グラフ3は、「て」と「や」の、54巻の各巻における地の文と会話文での出現率のヒストグラムであるが、会話文と地の文で出現率の分布が明らかに異なっている。他の助詞の場合も、会話文地の文で、出現率が大きく異なる助詞では、このような分布となる。
これらのことから、会話文と地の文で、助詞の働きによるグループごとに何らかの違いがあるのでなく、それぞれの用法と意味を持つ個々の助詞が、会話文と地の文で異なる出現の仕方をすることがわかった。会話文と地の文で異なる出現率をもつ「と」には、引用や、並列の用法があり、また「に」「を」等、格助詞と一応分類したが、接続助詞的用法をもつ助詞があり、これらを詳細に検討しなければならない。今後、会話文と地の文で、特徴のある出現の仕方をする個々の助詞について、さらに詳しく分析していく予定である。
格助詞 | に | の | と | を | が | より | して | へ | から |
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会話文 | 16.4 | 11.4 | 5.7 | 8.5 | 0.5 | 1.1 | 0.0 | 0.1 | 0.0 |
地の文 | 14.8 | 11.9 | 10.9 | 7.6 | 0.3 | 1.2 | 0.1 | 0.1 | 0.0 |
接続助詞 | て | ば | ど | つつ | で | ながら | とも | ものを | その他 |
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会話文 | 9.9 | 3.5 | 1.6 | 0.2 | 0.5 | 0.4 | 0.4 | 0.3 | 0.1 |
地の文 | 15.7 | 5.3 | 2.3 | 0.9 | 0.5 | 0.3 | 0.1 | 0.1 | 0.4 |
係助詞 | や | も | は | こそ | なむ | ぞ | か | かは | やは |
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会話文 | 2.6 | 10.4 | 9.3 | 3.5 | 3.5 | 1.1 | 0.8 | 0.3 | 0.2 |
地の文 | 1.0 | 10.0 | 6.5 | 0.5 | 0.5 | 1.5 | 0.2 | 0.1 | 0.0 |