〜健堅ぬヒャーの馬退治〜
むかし、本部の健堅という村に、健堅ぬヒャーという、とても
武芸の達者な男がいた。
その頃、健堅の村では、毎晩、何ものかが畑の農作物を食い荒
らし、村人たちはとてもこまっていた。
そのことをうわさに聞いた健堅ぬヒャーは
「よし、おれがその悪者を退治してやろう。」
と言った。
そしてある晩、山の中腹のだんだん畑の方へ行き、草を頭から
かぶり、草むらに身を隠して悪ものがあらわれるのを待っていた。
すると、とつぜん、健堅と瀬底島の間の海の中から、長いたて
がみをひるがえした馬があらわれ、健堅の村の畑まで一気に駆け
登ってきた。そして、あたりの農作物を食い荒らし始めた。
草むらに隠れて、それを見ていた健堅ぬヒャーは
「村の畑を荒らしまわっていたのは、この馬だったのか。よし、
必ず退治してやろう。」
と言って、力のありったけで馬のたてがみをつかまえた。そして、
そのまま馬にまたがり、馬とたたかった。
馬は狂ったようにあたりを駆けまわった。そして丘を越え、谷
をとびおり、健堅ぬヒャーを乗せたまま、やがて川にたどりつい
た。馬は、よたよたと川に近づき、水を一口のむとばたっと倒れ、
ついに息たえて死んでしまった。
村の農作物を食い荒らしていた馬は、こうして健堅ぬヒャーに
退治され、村人たちは、健堅ぬヒャーが馬に乗ったところをヌイ
シバル、馬が駆けまわった所をカキバルと呼ぶようになった。
そして、村人の作った粟やイモは毎年豊かに実り、人々は幸せ
にくらしたそうだ。
話者:崎浜マンチー(明治40年生)本部町北里
再話:長崎洋子