< むぐら >
出現する巻と本文(新日本古典文学大系 源氏物語;岩波書店)
「須磨」  P029-08
げによりほかの後見もなきさまにておはすらんとおぼしやりて、長雨に築地所所崩れてなむと聞き給へば、京の家司のもとに仰せつかはして、近き国国の御荘の者などもよをさせて仕うまつるべきよしのたまはす。

「蓬生」   P135-07
は西東の御門を閉ぢこめたるぞ頼もしけれど、崩れがちなるめぐりの垣を馬牛などの踏みならしたる道にて、春夏になれば、放ち飼う総角の心さへぞめざましき。
「蓬生」   P145-07
霜月ばかりなれば、雪霰がちにて、ほかには消ゆる間もあるを、朝日夕日をふせぐ蓬の陰に深う積もりて、越の白山思ひやらるる雪のうちに、出で入る下人だになくて、つれづれとながめ給ふ。

「松風」   P195-15
さらにみやこに帰りて、古受領の沈めるたぐひにて、貧しき家の蓬、もとのありさまあらたむることもなきものから、公私におこがましき名を弘めて、親の御亡き影をはづかしめむ事のいみじさになむ、やがて世を捨てつる門出なりけり

「椎本」   P364-10
好ましく艶におぼさるべかめるも、かういと埋もれたるの下より、さし出でたらむ手つきも、いかにうゐうゐしく古めきたらむ、など思屈し給へり。

「東屋」   P177-06
さしとむるむぐらやしげき東屋のあまりほどふる雨そそぎかな

「浮舟」   P253-04
まいりて、かくなんと聞こゆれば、語らひたまふべきやうだになければ、山がつの垣根のおどろの陰に、障泥といふ物を敷きて下ろしたてまつる。

「手習」   P350-09
秋の野の露わけきたる狩衣むぐらしげれる宿にかこつな

"参考"
<むぐらのかど>
「帚木」   P037−08
さて、世にありと人に知られず、さびしくあはれたらむの門に、思ひのほかにらうたげならん人の閉ぢられたらんこそ限りなくめづらしくはおぼえめ。

「末摘花」   P226-07
いとあはれにさびしく荒れまどへるに、松の雪のみあたたかげに降りつめる、山里の心ちしてものあはれなるを、かの人人の言ひしの門は、かうやうなる所なりけむかし、

「竹河」   P288-05
かくいと草深くなりゆくの門を避をよき給はぬ御心ばえにも、先昔の御こと思出られてなん

<むぐらのやど>
「横笛」   P057-03
霧しげき葎の宿にいにしへの秋にかはらぬ虫の声かな

<やえむぐら>
「桐壷」   P011-03
草も高く成、暴風にいとど荒れたる心ちして、月影ばかりぞ八重葎にも障らずさし入りたる。

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