< をみなへし >
出現する巻と本文(新日本古典文学大系 源氏物語;岩波書店)
「野分」   P043-12
紫苑、撫子、濃き薄き衵どもに、女郎花の汗衫などやうの、時に会ひたるさまにて、四五人連れて、こゝかしこの草むらに寄りて、色¥の篭どもを持てさまよひ、撫子などのいとあはれげなる枝ども取り持てまいる霧のまよひは、いと艶にぞ見えける。

「野分」   P048-15
吹きみだる風のけしきにをみなへししほれしぬべき心ちこそすれ

「野分」   P049-04
下露になびかましかばをみなへしあらき風にはしほれざらまし
なよ竹を見給へかし

「夕霧」   P111-03
女郎花しほるゝ野辺をいづことて一夜ばかりの宿を借りけむ

「匂宮」   P219-10
秋は世の人のめづる女郎花、小牡鹿の妻にすめる萩の露にもをさをさ御心移し給はず、老を忘るゝ菊に、おとろへ行藤袴、物げなきわれもかうなどは、いとすさまじき霜枯れのころをひまでおぼし捨てず、などわざとめきて香にめづる思をなん立てて好ましうおはしける。
「総角」   P410-08
をみなへし咲ける大野をふせぎつゝ心せばくやしめを結ふらむ

「総角」   P410-10
霧ふかきあしたの原のをみなへし心をよせて見る人ぞ見る

「宿木」   P055-01
をみなへししほれぞまさる朝露のいかにをきける名残なるらん

「宿木」   P041-06
女郎花をば見過ぎてぞ出で給ぬる。

「東屋」   P155-02
帷子一重をうちかけて、紫苑色の花やかなるに、女郎花のをり物と見ゆる重なりて、袖口さし出でたり。

「蜻蛉」   P312-08
女郎花みだるる野辺にまじるとも露のあだ名をわれにかけめや

「蜻蛉」   P312-12
花といへば名こそあだなれをみなへしなべての露にみだれやはする

「蜻蛉」   P313-01
旅寝して猶心みよをみなへしさかりの色にうつりうつらず

「手習」   P342-08
これもいと心ぼそき住まゐのつれづれなれど、住みつきたる人々は、物きよげにおかしうしなして、垣ほに植へたる撫子もおもしろく、女郎花、き経など咲きはじめたるに、色々の狩衣姿の男どもの若きあまたして、君もおなじ装束にて、南をもてに呼び据へたれば、うちながめてゐたり。

「手習」   P345-12
前近き女郎花をおりて、「何にほふらん」と口ずさびて、ひとりごち立てり。

「手習」   P348-07
あだし野の風になびくな女郎花われしめ結はん道遠くとも

「手習」   P348-13
うつしうへて思ひみだれぬ女郎花うき世をそむく草の庵に

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