出現する巻と本文(新日本古典文学大系 源氏物語;岩波書店) |
「葵」 p319-09 枯れたる下草の中に、竜胆、撫子などの咲き出でたるをおらせ給て、中将の立ち給ぬる後に、若君の御乳母の宰相の君して、「草枯れのまがきに残るなでしこを別れし秋のかたみとぞ見る。匂ひ劣りてや御覧ぜらるらむ」と聞こえ給へり。 「野分」 p046-04 はらはべなど、おかしき衵姿うちとけて、心とゞめとりわき植へ給ふ竜胆、朝顔のはいまじれる籬も、みな散り乱れたるを、とかく引き出で尋めるなるべし。 「夕霧」 p127-02 草むらの虫のみぞより所なげに鳴きよはりて、枯れたる草の下より竜胆のわれひとりのみ心ながう這ひ出でて露けく見ゆるなど、みな例のころのことなれど、おりから所からにや、いとたへがたきほどのものがなしさなり。 |