出現する巻と本文(新日本古典文学大系 源氏物語;岩波書店) |
「葵」 P296-13 御息所は、心ばせのいとはづかしく、よしありておはする物を、いか におぼしうむじにけん、といとおしくて参うで給へりけれど、斎宮のまだ本の 宮におはしませば、榊の憚りにことつけて、心やすくも対面したまはず。 「賢木」 P345-05 月ごろのつもりを、つきつきしう聞こえ給はむも、まばゆ き程になりにければ、さか木をいささかおりて持給へりけるを、さし入れて、 「変はらぬ色をしるべにてこそ斎垣も越え侍にけれ。 「賢木」 P345-09 神垣はしるしの杉もなきものをいかにまがへておれるさか木ぞ 「賢木」 P345-11 少女子があたりと思へばさか木葉の香をなつかしみとめてこそおれ 「賢木」 P350-07 暗う出で給て、二条より洞院の大路をおれ給ふほど、二条の院の前なれば、 大将の君いとあはれにおぼされて、榊にさして、 ふりすててけふはゆくとも鈴鹿河八十瀬の浪に袖はぬれじや と聞こえ給へれど、いと暗うものさはがしき程なれば、又の日、関のあなたよ りぞ御返しある。 「賢木」 P368-02 中将の君に、かく旅の空になむもの思にあくがれにけるを、おぼし知るにもあらじかし、などうらみ給て、御前には、 かけまくはかしこけれどもその神の秋おもほゆる木綿襷かな むかしをいまにと思たまふるもかひなく、取り返されむもののやうに、と、馴れ馴れしげに、唐の浅緑の紙に、榊に木綿つけなど、神神しうしなしてまいらせ給。 「若菜下」 P325-14 神人の手にとりもたる榊葉に木綿かけそふるふかき夜の霜 「若菜下」 P326-05 ほのほのと明けゆくに、霜はいよいよ深くて、本末もたどたどしきまで酔ひ 過ぎにたる神楽おもてども、をのが顔をば知らで、おもしろきことに心はしみ て、庭火も影しめりたるに、なを「万歳万歳」と、榊葉を取り返しつゝ祝ひ きこゆる御世の末、思ひやるぞいとゞしきや。 |